やっちゃったね。

事の始まりは母の電話。


母さんがね、電話をしていたんです。
あたしの部屋で。
あたしのことを。
学校行ってなくてひきこもりみたいだ、とか。
遊ぶときだけは元気になるんだ、とか。
でも病気だからしょうがないのよね、とか。


あたし、やめてって言ったよ。
もうやめてって。二回言った。
でも母さんはやめなかった。
その場にいるのが耐えられなかった。


刃物と包帯を持って部屋を飛び出した。
トイレで手首をスパスパ切った。
でも、切れ味が悪くてねえ。
今度買うナイフはもっとちゃんとしたのにしよう。
ホームセンターの安売りなんかじゃなくて。
肉を切る包丁を買ってみたらどうだろう。
なんてね。
切れないナイフでむりやりリスカしながら考えたよ。
部屋に戻った。
母さんがあたしの手首を見て、
悲しそうな顔をした。


ごめんなさい。


ごめんなさい。


耐えられなかったの。